- 酪農の仕事に興味のある方
- 酪農家の日常に興味のある方
- これから酪農業で働く方
こうした方々の参考になればという思いから、私が一般企業から酪農業へ「転職して良かった」と感じられたことをご紹介します。
酪農の良い面、大変な面の両面を知った上で、読んでくださった方の酪農観が深まると良いなと考えています。
酪農業へ転職して良かったこと、初回は「四季を感じられる」という点です。
酪農業では四季を感じることができる
私は酪農業で仕事をする前は、一般企業のサラリーマンとしてオフィスワークをしていました。終日屋内で仕事をしていたので、気温の変化を感じたり、自然と触れ合うことが少ない生活が基本。
四季の変化を感じることの少ない生活を送っていましたが、牧場で働くようになると、一年を通して四季の様々な変化を肌で感じられるようになりました。
牧場で仕事をする場合、牛舎内で作業をすることもあれば、屋外で作業をすることもあります。
そうした中で、具体的にどのような点から四季を感じられるのか。
以下、
❶気温
❷日の出と日没
➌景観
➍牛の体調
という4点について見ていきます。
❶気温
牧場では、ほとんどの場面で、エアコンなど空調のない環境で仕事をすることになります。
すると当然ですが、春秋は快適で、夏は非常に暑く、冬は非常に寒いという環境に。
おかしな言い方に思うかもしれませんが、好むと好まざるとにかかわらず気温を通して四季を感じざるを得ません。
気温から四季を感じる。当たり前じゃないかと思われるかもしれません。
しかし、以前の私のようにオフィスワークが中心の生活をしていると、決して当たり前ではなかったのです。通勤時に暑い寒いを感じることはあれど、オフィスで働いている最中はずっと空調が効いています。
そこで朝から夜まで働き、暗くなった頃に家に帰るという生活を繰り返していると、なかなか季節感を感じることがありません。
気温の変化ということだけでも、牧場でははっきりと四季の移ろいを感じることができます。
❷日の出と日没
日の出と日没を毎日目の当たりにすることでも、四季の変化を感じることができます。
酪農の朝は早く、夜は遅いからです。
私の牧場では朝6時に始業し、夜仕事を終えるのが20時頃です。すると、一年を通して日の出の時間と日没の時間には、たいてい牧場で作業しています。
夏はもう陽が出た状態で仕事が始まりますが、冬は真っ暗な中仕事が始まり、仕事中に日の出を見ます。
そして、夏は陽が沈むのがとても遅いのですが、冬は非常に早く陽が沈み、外が真っ暗になった中で仕事をします。
日の出、日没のタイミングが少しずつ変化することを日々見ることで、季節の移ろいを感じることになります。
➌牛舎周辺や牧草地の景観
一年を通して牛舎の周りや、牧草地の景観が変わっていきます。
この点が最も四季を感じられ、また自然の美しさに思いを馳せられます。
具体的には、「四季折々の草花、小さな生物が見られる」。草花といっても多くは雑草ですし、小さな生物というのも主に昆虫です。
そんなものから季節を感じるのか。そう思う方も多いでしょうが、案外これが侮れないのです。
大体の牧場の周りは自然豊かです。牧場の敷地内にも年中様々な雑草が生えてきたり、昆虫などが現れます。
季節ごとにどのような変化があるのか、具体的に見ていきましょう。
春
名前のわからない小さな花をつける植物やタンポポ、菜の花などが自生してきます。
あちこちに咲いている黄色、水色、紫色の小さな花。
ただの雑草でさえ、濃い緑が土の斜面を覆ったりすると、それはそれで春を感じられる景色だったりします。
ダンゴムシやミツバチ、チョウチョなども見られるように。菜の花が群生したあたりをチョウチョが飛んでいるのを見るとそれだけでささやかな幸福を感じられます。
夏
夏になると、もはや雑草が大きくなり過ぎています。牛舎内に蔓状の植物が伸びて入ってきてしまったり、日常作業の邪魔になってしまうことが多いです。
良くも悪くも感じる、植物、自然の力強さ。
この時期は虫も多いです。蜂や蚊、ハエ、チョウチョ、夜になるとコウモリなど一年で最も多様な野生の生き物に遭遇することになります。
もちろん良し悪しがあります。ハエや蚊などは実害がありますからね。
秋
牧場ですから紅葉を見られるといったことはありません。
夏に猛威を振るった雑草がその勢いを失って枯れ始めるのを見ると秋だなあと感じます。
トンボなどが夕暮れに飛んでいると郷愁すら感じられる時期です。
冬
多くの植物が枯れて土が見えたりしています。
昆虫などもほとんど見かけません。
雪が積もれば一面真っ白になりますし、牛の吐く白い息と雪の降っている景色は非常に風情があります。
➍牛の体調
牛の体調の変化を見ることでも、否が応でも季節感を味わえます。
特に夏は牛が許容できる気温を大幅に上回るので、丁寧なケアが必要で、実務的に重要な季節です。
呼吸が速くなりゼエゼエしますし、乳量もかなり落ちます。
それが秋に移っていくと牛の体調も落ち着いてきます。
そして冬になり、牛がみんなでエサを食べながら白い息を吐いているのを見ると「これぞ牧場の冬の景観」という感があります。
私はこの光景がとても好きです。
雑感
酪農では1日の仕事の中で屋内と屋外を行き来することが頻繁にありますし、屋外作業自体も多いです。当然、そこで四季は感じます。
ですがそれだけではありません。
酪農と四季は作業上も密接な関係にあります。季節に応じた作業があったり、季節に応じた牛の管理方法があります。
好むと好まざるとに関係なく、酪農で働くということは四季を肌で感じることになります。私自身は、酪農のこの面が非常に好きです。
サラリーマンであった頃、ビルの中でパソコン作業を一日中続けるという働き方に漠然とした違和感を覚えていました。人間としてこの姿は果たして自然なのだろうかと。
そしてそこからさらに過去に遡った学生時代。
私は都市部で生活をしていましたが、ビルなどの建物が密集し、「上を見上げた時に見える空が非常に狭い」という、自然を全く感じられない都会に不自然さを感じていました。
そもそも植物を目にする機会が非常に少ない。公園などには草花が生えていましたが、それすらも人の手によって植えられたものであり、目に映る全てに人為を感じていました。
地方の田舎育ちの私ですから、都市部の自然環境の少なさに過敏であった故の感想だとは思います。
学生時代、サラリーマン時代にこうした感想を持っていましたから、酪農業で働くようになって直に四季を感じられるようになったというのは私にとって大変大きな喜びでした。
同じようなことを感じたことがある人も、実は少なくないのではないでしょうか。
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