就農直後に苦労したことの4つ目は「勤務時間帯」へ慣れることです。酪農業の勤務時間帯というのはかなり特殊です。
牧場で仕事をするようになるまでは、小中高大の学生時にしろ、金融機関勤めのサラリーマンの時にしろ、多少の差はあれど概ね9時~17時というのが一つの活動時間の目安でした。今も多くの方がそうではないでしょうか。
それが酪農業となると、仕事のコアタイムというのは、早朝および夕方~夜ということになります。
以下詳述します。
説明
酪農において中心となる仕事というのは搾乳です。機械を使って牛から乳を搾る作業ですね。基本的にはこれを毎日朝と夕方の2回行います。必ずです。牧場での仕事というのは、これ以外にも給餌や糞処理、牛の繁殖管理や病気への対応など様々にありますが、多くの牧場で搾乳作業を中心にして勤務時間が決まってきます。
私の牧場では、
- 6:00 朝の仕事(主に搾乳)開始
- 10:00頃 朝の仕事終了
- 13:30頃 昼の仕事(機械メンテナンスなど様々)開始
- 16:00 夕方の仕事(主に搾乳)開始
- 20:00頃 夕方の仕事終了
という時間帯で仕事をしています。それまでの学生・サラリーマンの時とは活動時間が全く異なるんですね。これにかなり大変さを感じました。
具体的には、まず朝です。6時始業なので、起きるのはギリギリまで粘っても5時半頃です。酪農家なら当たり前だといわれればそうなんですが、なにせそれまでの生活からのギャップがあります。やはり眠いですし、体も起きたがらないといいましょうか。そういう感覚が強い中で起き上がって・準備して・牧場に向かうというのはなかなか強い抵抗感が生じます。一言で言えば「こんな朝早くから仕事をしないといけないのか」という気持ちを毎日抱くということです。
そして夕方ですね。多くの職場では終業が近いことを感じられる時間ではないでしょうか。ところが酪農では、そこから仕事が始まるんですね。こちらにもかなり大きなギャップを感じました。 一言で言えば「こんな夕方からメインの仕事が始まるのか」という気持ちを毎日抱くということです。
※実際のところは、搾乳を1日2回ではなく、3回行う牧場があったり、搾乳作業を搾乳ロボットという機械が全てこなしてくれる牧場もあるので、全ての酪農場が上記のような勤務時間であるとはいえません。しかし、今のところ日本の酪農業において多数を占めるのは、1日2回、朝と夜に搾乳をするという形態です。
対処・経過
対処もこうも慣れるしかありませんでしたね。
逆に言えば、やはり慣れます。初めのうちは多くの方が苦労される点だと思いますが、時間が経ってくると気持ちの面でも、身体的な面でもだんだん順応してきます。
私の場合では就農から1カ月ほど経ったころには慣れてきていたと思います。
※今回の記事に限らず、就農直後に苦労することというのは多くの場合が時間の経過・慣れることによって解決されると思います。
雑感
数年前に見たネット記事で今でもよく覚えているものがあるのですが、その記事には朝の10分を金銭的価値に換算すると1,000円強になるとありました。うろ覚えですが、多くの人に「学校や仕事がある朝にもうあと10分手に入れられるとしたらいくら払いますか」という質問をして、その回答から導出された結論が先の数字ということでした。人によって差はあれど、やはり朝というのはなんだか貴重な時間で、ゆっくりしたいものですよね。そして夕方からは帰宅して家でゆっくりと寛ぎたい頃ですね。いずれも多くの酪農牧場ではその時間帯にメインの仕事があります。初めのうちは誰しも大きなギャップを感じるでしょう。ただ、慣れてしまえばある程度は大丈夫です。ある程度としたのは、やはり今でも私自身が9時~17時の生活を時に懐かしく・羨ましく感じることがあるからです。
酪農に興味があるけど仕事の時間帯に対して不安があるという方や、牧場で働き始めたけど勤務時間帯に慣れるか不安という方に私からいえることは、「しばらく耐えて時間が経てば慣れる、大丈夫です」ということでしょうか。ただし、根っからの夜型人間だという方(夜中に目が冴えてよく活動し、日中は寝ていたいというタイプ)には正直なところなかなか厳しいものがあるかと思います。
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