- 職場での人間関係に疲れたから、農業・酪農業にでも転職しようか
- 農業・酪農業ならほとんど人と関わらずに働けるんじゃないか
ストレス社会といわれる昨今、このようなことを考えたことがある人は少なくないでしょう。
そのような方向けに、実は「その考え方だと、転職した後に後悔する可能性が高い」ということについて説明していきます。
つまり、「農業や酪農業でも、頻度は減るかもしれないが、人間関係からは逃れられない」ということです。
私自身、大きな組織でオフィスワークを経験した後、酪農業へ足を踏み入れたという経緯があります。
この記事を読んで、”農業や酪農業での人間関係の距離感・温度感”を把握し、
「人間関係から逃れたくて農業・酪農業へ転職したのに、思っていたのと違う」
と後悔する人が少しでも少なくなれば幸いです。
また、人間関係について悩んできた多くの人を救ってきた不朽の名著についても紹介するので、参考にしてみてください。
実態①雇用される以上、人間関係はすぐに発生する
まず、そもそも農家や農業法人に従業員という立場で雇用される場合、その雇い主(個人事業主もしくは社長)とは必然的に人間関係が生じます。
採用時のやり取りだけで終わるわけではなく、当然日々の作業についていわゆる報連相(報告・連絡・相談)が必要となります。
「明日からはしばらくこの作業をしてほしい」
「○○からこういう連絡がきたから、●●なように対応してほしい」
「作業中に作物や牛に何か異変を感じたらすぐに教えてほしい」
こういうやり取りが日常的に生じるでしょう。
必ずしも良好な関係を築く必要はありませんが、険悪な関係や、お互いに腹の内では信用していないという状況になってしまうと、遅かれ早かれその職場にいることは難しくなってしまいます。
つまり、誰かに雇用されるなら、その雇用主との人間関係はある程度以上の水準で維持する必要があるということです。
実態②チームで仕事をしたり、連携が必要なことが基本
また、農業といえども基本的にはチームで仕事をしたり、同僚と連携をとって仕事をする必要があります。
田んぼや畑で作物の生育管理・収穫などをする場合には、誰が・どこで・どの作業をするか・終わったら誰かのサポートに行くか、などなど従業員間で連携を取りながら仕事をすることになります。
酪農業においても同様です。
中心となる搾乳作業は複数人でやることが多いです。
たとえ一人でやる作業があったとしても、それが済んだ後は他の人の作業の進み具合に応じて臨機応変に作業をこなしていき、牧場全体で仕事が済んだところで一同解散となることが通常です。
職場の人との報連相、広くいえばコミュニケーションが重要だということは農業や酪農業でも変わりません。
実態③自分が起業すれば人と関わらずに済むか→そうでもない
これまでの内容を見て、「それなら誰かに雇われるんじゃなくて、自分自身が農家になってしまえば、ひとりで作物や牛と向き合うだけの生活が送れるんじゃないか」ということを考える方もいるかもしれません。
ですが、これもそうはいきません。
- 仕入先や販売先との日常的なやり取り
- 信頼関係の構築
- そして維持
は自分自身が経営者となった場合でも必要で、非常に重要な要素となります。
また、例えば田んぼや畑を使う場合には、隣の田畑の農家や所有者との関係性も無視できません。
酪農業でも、同業者間の人付き合いや信頼関係は欠かせません。
メリット①人とのやりとりの頻度は確かに減少するかもしれない
ここまで、農業や酪農業に転職しても人間関係からは逃れられないという、人によっては心苦しく感じられるであろうことを説明してきました。
ですが、農業や酪農業には、人間関係の面からプラスに捉えられることもちゃんとあります。
まず、人との会話や交渉事、根回しといったオフィスワークでは日常的なやり取りも、農業・酪農業の現場ではたしかに頻度が落ちるでしょう。
仕事の中心はやはり日々の農作業であり、作業中は誰かとコミュニケーションをとる頻度が必ずしも高くないのです。
「人付き合いが嫌なわけではないけど、もう少し自分の作業に集中できるような仕事環境、会話の少ない職場がいい」。
このような場合には、農業・酪農業も選択肢として悪くないでしょう。
メリット②会社の看板や人事評価を気にしたうわべの会話は減る可能性が高い
また、会社にはよるでしょうが、”会社の看板”や”自分の人事評価の有利不利”を暗に気にしながら会話をするということが、オフィスワークでは少なくないでしょう。
私自身の経験でいえば、
- 取引先でも、自分が所属する会社名を背負っている気がして、安易なことを言えない
- 上司の指示や助言、終業後の付き合いについて納得ができないことがあっても、言い方を間違えば人事評価で損をすることになるため、言葉遣いに過度に注意しないといけない
- 仕事をしていて、本音と建前の割合は、圧倒的に建前の方が大きかった
といったことがありました。
こうしたことが、農業や酪農業の現場ではかなり緩和される実感があります。
背負うような看板がなく、良くも悪くもあけすけな人が多いので、自分を飾る必要がない。
全く建前を言わなくなったかといえば、もちろんそんなことはありません。ですが、本音で会話をできる場面はオフィスワークをしていた頃よりもはるかに多いということは断言できます。
少し頭でっかちな表現をすると、オフィスワークをしていた頃は、相手を「記号(=どこどこの会社の○○という役割の人)」として無意識に捉えてしまうことが多かったのですが、酪農業に入ってからは相手を「ひとりの血の通った人」として見られることが圧倒的に増えました。
このように本音と建前の、本音での会話ができる機会は、たしかに農業や酪農業では増えるということが期待できるでしょう。
人間関係に悩んだ時に読みたい不朽の名著『人を動かす』
最後に、人間関係で悩んでいる、困っているという人に是非おすすめしたい書籍を紹介します。
デール・カーネギーの『人を動かす』という本です。
書店や図書館に行けば必ず置いてあるような本なので、一度は見たことがあるという人も多いのではないでしょうか。
ずばり「人間関係を良くするにはどうしたらいいか」ということをテーマにした不朽の名著です。
古臭いんじゃないかと敬遠したくなる人もいるかもしれません。
ですが、長年読み継がれている本というのは、毎年数多の本が出版される中でも淘汰されずに生き残ってきた”本物”。
今でも通用する考え方・ノウハウだからこそ、支持され続けているのです。
私自身、AudibleというAmazonのオーディオブックサービスで本書を初めて読みましたが、家族や職場の人との向き合い方が変わりました。
「本当は職場を変えるのではなく、自分自身が変われたら良いんじゃないか」
このように考えている人なら、きっと光明を見出せるでしょう。
まとめ
今回は、「人間関係に疲れたから農業・酪農への転職を考える、はおすすめしにくい」ということについて説明してきました。
人間関係から逃れるために農業や酪農業へ転職することは、解決策としてはあまりおすすめできません。
農業や酪農業は、身体的にも精神的にも酷な労働を伴います。
転職を考える前に、自分が求めるものや、本当に農業や酪農業が自分に向いているか、冷静に考えてみることをおすすめします。
もし農業や酪農業が自分に向いていると感じた場合でも、人間関係から逃れることはできません。
そのため、自分自身のコミュニケーション能力を高めることや、ストレス解消方法を見つけることが重要です。
農業や酪農業は、自然と向き合い、生産物を育てることができる魅力的な仕事ですが、注意点も多くあるため、十分に理解してから転職を検討しましょう。
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