酪農や牧場というと、
のんびりマイペースに仕事をするのかな
というイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。テレビや乳製品のパッケージで目にする「放牧された牛たちが思い思いにゆっくりと草を食べる」そんな牧歌的な光景が象徴的ですよね。
一方で、
酪農家は生き物を相手にした仕事で忙しくて大変だよ
という話を聞いたことがある方もいるでしょう。
では、実際のところ酪農業の労働時間はどんな感じなのか。
そんな疑問に対する内容を今回は記事にしてみます。
具体的には次の3点から考えてみます。
- データから見る酪農業の年間労働時間
- 一酪農家である私の労働時間(1日あたり・年間労働時間)
- 私の周辺の酪農家さんたちの労働時間(1日あたり)
先にポイントだけまとめておきます。
- データから見る酪農業の年間労働時間
- 2,057時間
- これは製造業よりも12%ほど長い
- 一酪農家である私の労働時間(1日あたり・年間労働時間)
- 1日あたり労働時間は11時間
- 年間労働時間は3,600時間
- 私の周辺の酪農家さんたちの労働時間(1日あたり)
- 1日あたり労働時間は「8時間~10時間の範囲内」
酪農業の休日数にフォーカスした記事もあります。
では、順に説明していきます。
データから見る酪農業の年間労働時間
上記のデータは農林水産省の資料から引用しています。
酪農業の年間平均労働時間は2,057時間です。
対して、表の中で唯一畜産業ではない製造業は1,838時間です。
ざっくりと酪農業の方が製造業よりも年間労働時間が12%長いということです。
ちなみに、一般的なサラリーマンのモデルとしてよく使われる「1日8時間×週5日労働・年間休日120日」の場合の年間労働時間は1,960時間です。それと比べても酪農は年間で100時間ほど長いですね。
なお、酪農と同じく畜産業である、肉用牛と養豚は製造業よりも年間労働時間が短いですね。
まずは酪農業の労働時間をデータから見るとこのようになります。
一酪農家である私の労働時間(1日あたり・年間労働時間)
先ほどのデータは、色々な酪農家のデータから算出したあくまで平均値ということになります。
一方で、酪農業といっても全国に様々な牧場があり、規模から経営方針まで本当に色々です。
つまり、牧場によって労働時間もかなり違いがあり、データからだけではその実態がつかみにくいというのが私の考えです。
そこで、ここからは酪農業の労働時間の「実際」として、
- 一酪農家である私の労働時間
- 私の周辺の酪農家さんたちから聞いた労働時間
について紹介します。
あくまで一事例としての紹介にすぎませんが、先ほどのデータと併せて、複数の観点から酪農業の労働時間を捉える材料としてもらえるとうれしいです。
無数にある牧場での働き方の、あくまで「一事例」としてのご紹介です
私の労働時間(1日あたり)
約11時間/日です。
*繫忙期は13時間/日(年2ヶ月ほど)
労働時間の内訳は、
午前(4時間) | 仕事①:搾乳、給餌、牛糞処理、子牛の管理など定型作業 |
午後(7時間) | 仕事②:機械のメンテナンスから牛糞の運搬など日替わりで様々 仕事③:搾乳、給餌、牛糞処理、子牛の管理など定型作業 |
です。
なお、私が働いている牧場は地域の酪農家の中でも労働時間が長い方だといわれています。
酪農業全体の中でも、平均よりは労働時間が長い牧場ですね。
私の年間労働時間
約3,600時間です。
算出過程は、
労働日数317日(=365-年間休日48)×11時間/日+(繁忙期の日数60日×超過勤務2時間/日)=3487+120=3607時間
です。
先ほどのデータでは、
酪農業の年間平均労働時間は2,057時間、製造業は1,838時間でした。
なので、私の場合は酪農の1.5倍、製造業の2倍近くということになります。
これは1日の労働時間が長いことに加え、休日数の少なさによるところが大きいです
私の周辺の酪農家さんたちの労働時間(1日あたり)
私が周辺の酪農家さんたちから聞く話では、
だいたいどこの牧場も「1日あたり8時間~10時間」という範囲に収まっていますね。
これは、経営者自身もそうですが、そこで働く従業員さんたちもこの範囲内であることが多いということです。
なお、年間労働時間は牧場によって休日数にかなり違いがあり、参考にできそうな数値が出せないので割愛としています。
まとめと感想
まとめ
今回見てきたことは、
- データから見る酪農業の年間労働時間
- 2,057時間
- これは製造業よりも12%ほど長い
- 一酪農家である私の労働時間(1日あたり・年間労働時間)
- 1日あたり労働時間は11時間
- 年間労働時間は3,600時間
- 私の周辺の酪農家さんたちの労働時間(1日あたり)
- 1日あたり労働時間は「8時間~10時間の範囲内」
ということでした。
感想
ここまで実例やデータに基づく話を中心にしてきましたが、最後に私の個人的な感想も書いておきます。
実は多くの酪農家さんがそうであるように、私の仕事についても牧歌的な風景とは真逆の働き方をしています。
即ち、一般的な仕事と比較すると労働時間が長く、忙しなく働いていることが多いです。
酪農業では、
- 毎日
- 基本的には同じ時間に
- 必ずやらなければいけない仕事
というものが割と多くあります。
搾乳、エサやりや牛糞処理などがそれにあたります
こなさないといけない定型作業が多く、時間に追われるような形になるので、決してのんびりとは仕事をしていられないのです。
さて、年間で3,600時間ほど仕事をしている感想はどうかというと、圧倒的に自由時間が少ないということがいえます。
時間にゆとりがあるなと感じながら過ごす日はほぼなく、そこに機械の故障や牛の難産などのトラブルが加わって仕事が滞ると、かなりのストレスが生じます。
1年の中であまりに仕事をしている時間が長く、かつ疲れていたりすると「何のために仕事をしているのだろう、何のために生きているのだろう」といった考えがグルグルしてくることもやはりあります。
酪農業は昔から労働時間が長い産業といわれていますし、実際にそうです。しかし、酪農業の将来を考えるならばこのままではやはり良くないでしょう。
労働時間が長いということは、後継者が牧場を継ぐことを敬遠する主因にもなりますし、若い方を含めた新規参入者が魅力を感じにくい原因にもなります。
大手企業を中心に週休3日制の議論がなされ、時には週休4日制という言葉までメディアの見出しに出てくるような時代です。
旧態依然とした労働環境では酪農業から人が遠ざかっていってしまうでしょう。
幸い、酪農業においても一部の牧場では完全週休2日制をまずは達成し、将来的には週休3日制を導入したいという動きが実際に出てきています。
こうした動きが酪農業界を牽引していくことに期待したいですね。
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当ブログの酪農カテゴリーの記事を要約した「酪農まとめ記事」です。酪農にまつわる多彩なトピックを紹介しています
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酪農業の休日数にフォーカスした記事もあります。