【酪農】仕事内容を簡単に解説:毎日の作業から不定期のものまで

酪農の仕事内容 酪農

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本記事では酪農牧場での仕事内容を「中心的な作業」と「不定期に必要となる作業」に分けて、それぞれ紹介していきます。

実際に牧場で働いている立場から書いているため、現場感や実態が少しでも伝わればうれしいです。

以下、次のような作業内容について1つずつ紹介していきます。

酪農業の中心的な作業
  • 搾乳
  • 牛群管理
  • 繁殖管理
  • 給餌(エサやり)
  • 子牛の飼育管理
  • 牛舎の清掃
  • 牛糞処理
  • 分娩対応
不定期に必要となる作業
  • 牧草生産・収穫
  • その他
    • 機械修理
    • 暑熱対策
    • 害虫・害獣対策
    • データ収集・分析
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酪農業の中心的な作業8つ:基本は「搾乳」

搾乳は牧場仕事の中心

まずは毎日の牧場仕事で中心となる8つの作業についてです。

「酪農業で働く」というとこれらの作業をすることが基本となります。

ただし基本=簡単というわけでもありません。

どの作業も「知識や経験」が必要となる重要なものばかりです。

酪農業の中心的な作業
  • 搾乳
  • 牛群管理
  • 繁殖管理
  • 給餌(エサやり)
  • 子牛の飼育管理
  • 牛舎の清掃
  • 牛糞処理
  • 分娩対応

①搾乳

酪農の中で最も基本的かつ重要な作業が「搾乳」です。

毎日必ず行う必要があります。

1日に2回搾乳をする牧場が多いですが、大規模牧場など一部では1日に3回搾乳をしています。

3回搾乳だと1日の乳量は増えるというメリットがありますが、労働負担が重くなるため、人手が確保できている大きな牧場で行われていることがほとんどです。

乳牛は規則的な生活を好むため、搾乳も毎日同じ時間にするのが基本。これもまた酪農家の労働負荷が高い理由の一つです。

搾乳をしないと乳牛が乳房炎などの病気になってしまいますが、「搾乳をやりさえすれば良い」というものでもありません。

いいかげんな方法でやるとこれも乳房炎など病気を発生させ、ひどい場合には乳牛の死亡につながってしまうケースもあります。

「乳を搾る」という字面だけを見ると簡単そうに見えますが、

搾乳時のポイント
  • 乳牛の体の仕組みについての知識
  • 搾乳時の乳牛の様子の把握
  • 優しくかつ丁寧な作業

が必要な、奥深さもある作業です。

とはいえポイントを押さえた上で作業に慣れてくれば大丈夫です。

一見すると毎日同じことの繰り返しに見えますが、言葉を介することはなくても乳牛との対話が求められる作業なので、日々変化があるのが搾乳作業の醍醐味でもあります。

多くの牧場では「ミルカー」という機械を使って人が手作業で搾乳をしていますが、一部の牧場では「搾乳ロボット」という機械のみで自動的に搾乳作業をこなしてくれる装置を利用しています。

搾乳ロボットを導入している牧場では、人が手作業で搾乳をすることはほとんどなく、搾乳による労働負担が少ないのが特徴です。

一方で搾乳ロボットの故障やメンテナンスに悩まされるケースもあり、まだまだ課題があります。

酪農業界のトレンドとして徐々に搾乳ロボットが普及してきてはいますが、

  • 導入・メンテナンス費用の高さ
  • 牛舎設計の見直し

が必要になることなどから、少しずつの普及といったペースにとどまっています。

②牛群管理

牛群の管理も日々の欠かせない仕事の一つです。

牛群管理といってもその内容は多岐に渡ります。

牛群管理の具体例
  • 乾乳予定牛のピックアップ、乾乳処置
  • 牛群移動
  • 乳牛の購入
  • 乳牛の出荷
  • 体調の悪い牛の発見、対応
  • 獣医さんへの依頼

などなど。

牛の状態に問題がなさそうか一頭一頭に気を配る「観察力」や、台帳やデータに基づいた牛群の管理が求められます。

③繁殖管理

繁殖管理では次のような作業をします。

繁殖管理の具体例
  • 発情牛の発見
  • 人工授精
  • 受精卵移植
  • 獣医さんへの依頼

乳牛は子牛を産んではじめて乳が出ます。

そのため乳牛をよく観察して発情のタイミングを見逃さずに、人工授精なり受精卵移植なりをすることが重要です。

「分娩→搾乳&人工授精or受精卵移植→乾乳→分娩→…」

このサイクルを上手に回してくことが牧場の生産性に直結するため、決して疎かにできない仕事の1つとなっています。

牛群管理と同じように乳牛に対する「観察力」が求められるとともに、繁殖管理に関する「知識」をしっかりと身につけていることも必要です。

④給餌(エサやり)

給餌(エサやり)も毎日必要な作業です。

エサやりという言葉を見ると「簡単そう」と思えるかもしれませんが、こちらも実は奥が深い大事な作業となっています。

簡単ではないというのは、例えば

  • 「牧草」と「トウモロコシなどの配合飼料」との割合が良くないと乳牛の体調が崩れてしまう
  • 牧草の長さ(切断長)によってエサの食べ方や食べる量が変わってしまう
  • 真夏など暑くて乳牛がエサをあまり食べたがらない時期は、飼料設計を変える必要がある
  • 大型のミキサーなど重機を扱う場合はこまめなメンテンナンスが必要

などです。

ここでは乳牛の栄養学についての知識や、作業をする人でエサの内容が変わってしまわないような「作業の標準化・マニュアル化」が重要といえます。

⑤子牛の飼育管理

子牛の飼育管理では

子牛の飼育管理の具体例
  • 哺乳バケツを使った哺乳
  • 哺乳バケツでの飲み方を覚えさせる
  • 耳標の装着
  • 体調を崩していないか観察する
  • (牧場によっては)哺乳ロボットでのミルクの飲み方を覚えさせる
  • 獣医さんへの依頼

といった作業をします。

子牛は体が小さくかわいいのですが、まだ体が弱くて体調を崩しやすいです。

体調悪化の早期発見・早期処置が求められます。

また子牛とはいえ意外に重く、力もあるため、労働負荷は必ずしも低くありません。

⑥牛舎の清掃

牛舎の清掃は搾乳や給餌の合間に行います。

牧場では

  • 牛のエサとなる牧草や配合飼料、ビタミンなどの添加剤
  • 牛の毛
  • 乾いた牛糞の細かいもの
  • 塵やホコリ

などが風で運ばれたり、クモの巣ができやすいことなどからこまめな清掃が必要です。

また乳牛が休むスペースも糞で汚れたりするため、毎日掃除してきれいにします。

⑦牛糞処理

牛糞の処理も酪農業では欠かせない重要な作業部門の1つです。

とはいえ一般的には「日々出てくる牛糞をどうさばいたら良いものか」という温度感で扱われています。

その理由は、乳牛が増えれば増えるほど当然糞の量も増えてくるわけですが、基本的に牛糞は収益を生みづらく、費用をかけて処分している牧場も多いからです。

牛を飼養するからには「避けて通れない牛糞」を扱う作業部門といえます。

具体的な作業内容は牧場や設備ごとに異なりますが

牛糞処理の具体例
  • 重機を使った牛舎からの糞出し
  • トラックを使った牛糞の運搬
  • 乾燥ハウスへの投入
  • 堆肥舎で牛糞を切り返す

といった作業をします。

そして案外困るのが、牛糞処理に関係する機械や設備は、腐食などによりよく壊れるということ。

こうした機械や設備のメンテナンスも併せて行う必要があります。

⑧分娩対応

乳牛の出産に立ち会って、動向を注視したり必要に応じて介助するという仕事もあります。

乳牛は基本的に「1年ちょっとで1回」という頻度で出産しますが、出産を経て乳が出るようになるため、できるだけ分娩時のトラブルを防ぐことが大切です。

ひょっとすると「出産なら成り行きに任せておけば自然に生まれてくるのでは?」と思うかもしれません。

もちろんそのようなこともありますが、人の手助けが必要な出産シーンは想像以上にあるものです。

そして必要な手助けができない場合

  • 死産
  • 母牛にもダメージが残り搾乳に影響が出る
  • 最悪母牛が死亡する

といったことが起きます。

分娩対応で実際にどんなことをするかというと

分娩対応の具体例
  • 分娩の進み具合の定期的な確認
  • 触診
  • 産道の子牛の姿勢を直す
  • 子牛を引っぱる
  • 獣医さんへの依頼

といったことをします。

いずれも「正常な出産とそうでない出産を見分けられる知識」や「判断力」が必要です。

なお相手が生き物であるため分娩がいつ始まるかはわかりません。日中なら良いですが、深夜に始まることももちろんあります。

深夜に及ぶ分娩対応が必要なこともまた、酪農業の労働負荷が高い主因の1つです。

不定期に必要となる作業:牧草地作業や機械修理など

牧草地とトラクター

ここでは毎日行うわけではない、「不定期に必要」となる酪農作業について紹介します。

不定期に必要となる作業
  • 牧草生産・収穫
  • その他
    • 機械修理
    • 暑熱対策
    • 害虫・害獣対策
    • データ収集・分析

牧草生産・収穫

牧草の生産や収穫の作業は主にトラクターなど機械を使って行います。

牧草関連作業の具体例
  • 牧草地の掘り起こし
  • 種まき
  • 肥料散布
  • 除草剤散布
  • 収穫、保存
  • 堆肥の散布

牧草関連の作業は比較的イメージしやすいかもしれません。

さてこの牧草生産の作業ですが、ある牧場とない牧場があります。

全ての酪農牧場が自社で牧草を作っているわけではなく、外部からの購入100%という牧場も決して珍しくないのです。

北海道の牧場では牧草を作っていることが多く、反対に都府県の牧場では牧草を購入していることが多いです。

牧草を作っている場合は日々の牧場作業にプラスで「牧草地作業」が加わるため、その時期の労働負荷が高まる「繁忙期」とそうでない時期とがあることになります。

その他色々

「不定期に行う仕事」は他にも多々ありますが、以下で簡単に触れていきます。

機械修理

酪農業ではよく機械が壊れるため、自分たちで簡単な修理を行うことがしばしばあります。

機械が壊れやすい理由ですが

酪農業で機械が壊れやすい理由
  • 乳牛の体が大きく力も強い
  • 糞尿やそこから生じるガスで機械が腐食しやすい

がメインです。

個人的にはこれらに加えて「酪農機器を作るメーカーがそれほど多くなく、競争が激しくないために機械の質が必ずしも良くない」という見方をしています。

機械の故障は突然起こるため、作業が中断されたり、搾乳ができなくなったりと困ることがよくあります。

機械の修理をどこまで自前でするかは、牧場によりけりです。

自分たちで対応できない場合や忙しくて手が回らない場合は、修理業者さんを呼んで対応してもらいます。

暑熱対策

乳牛は暑さに大変弱いため、気温が高くなってくると暑熱対策を講じることがあります。

どういった対策をとるかは牧場によって異なりますが、

暑熱対策の具体例
  • ミストの噴霧器の設置
  • 換気扇の掃除
  • 屋根に断熱塗料や石灰を散布する

などをします。

害虫・害獣対策

気温が高くなってくるとサシバエやアブなどの吸血昆虫が牛を狙うようになるため、防虫ネットを牛舎の周囲に張ったりします。

また乳牛の食べる飼料につられて

  • ハトやカラス
  • 野良猫
  • 野良犬
  • ネズミ

などが牛舎内に入ってしまうことも。

衛生上良くないためこうした害獣が牧場に侵入しないよう、ネットを張ったり扉を設置したりするほか、場合によっては保健所に連絡して対応してもらうこともあります。

データ収集・分析

生乳生産量、人工授精の受胎率などのデータを日々蓄積して、分析する作業です。

こちらは必須ではないため、しっかりやっている牧場から全くやっていない牧場まで様々。

ですが向上心や改善意欲の強い牧場では「データ収集・分析」はほぼ確実にやっています。

何かを試してはデータを分析して、良ければ継続、ダメなら別の施策を試す。こうしたサイクルを繰り返していきます。

どんなデータに注目して集めるかは牧場によって異なりますが、例えば

集めるデータの具体例
  • 生乳生産量
  • 飼料の給与量
  • 乳房炎の罹患率
  • 事故率
  • 淘汰率
  • 発情発見率
  • 受胎率
  • 妊娠率

などです。

酪農業では体を動かして行う作業が大部分を占めますが、データ収集・分析に関しては「頭を使う」作業です。

肉体労働よりも知識労働が好きな人には、貴重な作業部門の一つといえるでしょう。

ちなみにデータ収集・分析の方法については、

  • Excelなどを使って自力で行う
  • 牛群検定を利用する
  • 自動でデータ収集・分析をする有料サービス(ファームノートなど)を利用する

などがあります。

よりオフィシャルな情報・動画を観るなら中央畜産会のページがおすすめ

ここまで「酪農牧場での作業」について私なりにまとめてきましたが、専門機関が酪農作業について紹介しているサイトもあります。

公益社団法人中央畜産会の「畜産のお仕事 農場作業のイロハ」というサイトです。

写真や動画も掲載されているため、よりイメージを膨らませたいという人にはわかりやすくて良いと思います。

興味のある方は併せてご覧になってください。

まとめ:酪農の仕事は様々、かつ奥が深い

本記事では、次のような酪農の仕事について1つずつ紹介してきました。

酪農業の中心的な作業
  • 搾乳
  • 牛群管理
  • 繁殖管理
  • 給餌(エサやり)
  • 子牛の飼育管理
  • 牛舎の清掃
  • 牛糞処理
  • 分娩対応
不定期に必要となる作業
  • 牧草生産・収穫
  • その他
    • 機械修理
    • 暑熱対策
    • 害虫・害獣対策
    • データ収集・分析

酪農の求人には「搾乳」、「エサやり」といった言葉だけが並んでいることが多く、ややもすると「すごく簡単そう」と思う人もいると思います。

ですが実際には「知識や経験」が非常に重要な、奥の深い作業ばかりです。

そうしたイメージと実態の乖離を、少しでもこの記事の内容や後半に紹介した中央畜産会のページで埋めていただければ本望です。

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