2022年5月に始めた酪農ジャンルに関する定点観測記事となります。
定点観測記事を始めた趣旨は次のとおりです。
酪農業は多くの方々からは遠い存在です。
一方で、一定数ですが遠いところから酪農に興味を持たれている方もいます。仕事としての酪農に興味がある方や牛乳や牛肉の消費者さんですね。
ですが、その興味関心に十分に応答できている情報媒体はそれほど多くないというのが私の印象です。
なのでこの記事では、
- 一酪農家から見た現在の酪農業界動向
- 私の労働状態・考えていること(酪農業で実際に働いている人間の一事例として)
について簡単に記していきます。
いずれも酪農を仕事とする一個人の私見ですが、酪農に興味を持たれている方に対して現場の声・温度感を届けるという意味で何か参考になればうれしいです。
酪農業界動向
景況感
今年に入ってからのトレンドが変わらず、非常に悪い。
ポイントを列挙すると、
- 費用の増加幅に対して乳価(生乳の販売単価)が僅かしか上がらず、損益が大幅に悪化
- 損益悪化の主因は、円安、飼料高、燃料費高、資材・機材の単価上昇、など
- 生乳の需給が緩和したことで、減産圧力が生じている
といったところでしょうか。
経営環境の悪化を受けて廃業を決めた同業者さんが、私の地域でも結構出ています。
「あそこの牧場も来月やめるみたいだよ」
そんな話題が珍しくなくなってきています。
参考になる資料の紹介
一酪農家に過ぎない私がこの記事に書くことも、酪農業界の温度感をみる一つのサンプルにはなると思います。
ですが、よりマクロ的に酪農業界の動向をつかもうと思うと、やはり業界団体が出している資料を読むのが良いでしょう。
一般社団法人「中央酪農会議」というところが、2022年9月付で
『酪農経営の早期改善に向けて~外的要因に影響を受ける酪農をめぐる情勢~』
という資料を公表しています。
気になる方は是非ご覧ください。
業界が抱えている課題(最近のトピック)
- 飼料費の高騰
- 価格転嫁が期待されるところだった乳価や牛肉相場が不調
- 廃業する酪農家が増えてきた
- 行政からの支援策は対象が絞られており、対応できる酪農家は限定的
- 生乳の需給緩和を受けて、減産圧力が生じている
- 酪農家の相次ぐ廃業を受けて、(手数料や利用者が減ったことで)酪農協や酪農ヘルパーなどの組織再編が迫られている
業界が抱えている慢性的課題
- 飼料の海外依存度が高く、飼料価格に経営が大きく左右される
- 需給調整が難しく、増産要請や減産圧力のサイクルにのまれる傾向
- 慢性的な人手不足
- 日本の低成長による相対的魅力度の低下から、外国人技能実習生を年々受け入れづらくなっている
- 人材の定着率が悪い
- 価格決定権に乏しく販売力が弱い
私の労働・考えていること
個人的に最近気になっていること
- 経営環境の厳しさが増す中、1年2年先にどれだけの酪農家が存続できているか。
- 昭和・平成の空気感や組織体制が残ってしまっていた酪農協や行政組織が、酪農家の相次ぐ廃業を受けて変化を迫られているが、果たしてうまく変われるか否か。
- 自分が働いている牧場には「論語と算盤」の論語部分が欠けていることが、長きにわたって多くの問題を生み、自分自身がどうやら後継を諦めそうなことに繋がっているのではないかということ。ただし、自分自身の実力不足も間違いなく大きな要因。
作業中に聴いている音声コンテンツ
- Podcast
- a scope~資本主義の未来編~
- よっしーのワクワク天職ゼミ
- 超相対性理論
- COTEN RADIO *6周目
- Voicy
- ヒトデラジオ(ヒトデ)
- なかじのウェブ職ラジオ(中島大介)
- ウラヤマグチシュウ(山口周)
- たぱぞう投資大学mini(たぱぞう)
- Amazon Audible
- 『論語と算盤』渋沢栄一
11月中旬まで音声コンテンツとしてはPodcastしか知らなかったので、主にコテンラジオを2倍速再生で繰り返し聴くというようなことをしていました。
ですが、著名な投資ブロガーであるたぱぞうさんが音声コンテンツのアプリ「Voicy」を始めたことを機にVoicyを聴き始めると、とても使い勝手が良く、番組もPodcastとはまた違う良さがあるものが多くありました。
これは良いぞと思ってしばらくVoicyばかり聞いていたのですが、一点大きな問題が。
事前に番組をダウンロードしてオフライン再生をするということができないのです。データ通信量の消費が激しいストリーミング再生しかできない。
楽天モバイルの月3GBプランを利用している私にとってはかなり致命的でした。Voicyばかりを聴いていると10日ぐらいで3GBを使い切ってしまいます。
そこで、他にも何かないかと探して、つい最近辿り着いたのがAmazon Audibleです。
プロのナレーターや声優が本を朗読したものを聴くことができるサービス。最近のビジネス書から小説、古典的名著まで色々なものを聴くことができます。こちらは事前にダウンロードして、オフライン再生が可能。
普段は1ヶ月間無料体験をやっているみたいですが、今は12月26日までの限定で2ヶ月間無料体験キャンペーンをやっています。ならば、ということで登録して聴き始めているのですが、いいですね。
倍速再生の機能を使えば1日に1冊まるまる聴くことができます。
今は渋沢栄一の『論語と算盤』を聴いていますが、『サピエンス全史』、『老子』、『夢をかなえるゾウ』、『銃・病原菌・鉄』など色々と聴きたいものをダウンロードしています。
酪農業は私を含めて一般的に余暇時間が少なくなりがちです。一方、搾乳作業のように音に注意を払わないといけない場面以外では、音声コンテンツを聴きやすい環境にあります。
仕事をしながらAudibleで本の知識を得ることができれば、自由時間が少なくて、もしくは肉体労働で疲れてしまって本を読めないという悩みをかなり解消できそうです。
最後に
2022年11月現在の所感としては以上です。
年初の目標として、「どん底まで落ちた仕事に対するモチベーションを何とか引き上げたい」ということを掲げていましたが、儚くも真逆の方向に行きそうです。
「人を変えることはできないが、変わるきっかけの種はまける。」そんなことを各所で聞くことがありますし、私も実感しています。
ですが、それに加えて最近ひしひしと感じていることは、「変わるきっかけの種はまけるが、それが効力を持つのは相手が変わりたいという欲求を持っている時だけ」だということです。
変わらないことに重きを置く人・組織に対して自分は働きかけてきましたが、それが実を結ぶことは構造的にないのだということがようやく理解できてきました。
ネガティブなことをつらつらと書いてきましたが、それはあくまで自農場に対する所感であって、酪農業という仕事に対するものではありません。酪農業それ自体が社会に与えられる良い作用・ポテンシャルは無数にあると思っています。
今回の記事が酪農後継予定者、酪農業界で働いてみたい人、消費者として酪農に興味のある人、そのような方々の参考に少しでもなればうれしいです。
引き続き、不定期に(できたら月1回程度)定点観測記事を書いていきます。
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