【暮らし】『売上を、減らそう。(中村朱美)』を読んだ感想・レビュー

暮らし

図書館で借りた本です。

著者は、京都にて1日100食限定のステーキ丼専門店「佰食屋」を経営している方です。

タイトルのとおり、売上至上主義に対するアンチテーゼが主題となっています。飲食店に限らず、組織運営に広く通じる内容が書かれています。

数字や仕事に追われるような日常に疑問を抱いている、そんな方には多くの示唆を与えてくれる本です。特に経営者や管理職、組織を動かす立場にいるような方なら、その組織を好転させられるヒントを得られるかもしれません。

大まかな内容

大まかな内容としては、

  • 飲食店を起業するまでの経緯や理念
  • 1日100食限定というコンセプトの意味やその成り立ち
  • 1日100食限定にしたことで得られたメリット、デメリット
  • ワークライフバランスのライフに重きを置いた経営
  • 従業員のマネジメント手法
  • 佰食屋の金銭的側面
  • 従業員採用の視点
  • 経営危機に直面して生まれた新たな発想
  • ・・・

といったような内容です。

飲食店経営のかなりリアルな内容が書かれています。

理念的なことから組織運営の実際まで幅広く、そして何よりも具体的に書かれています。読んでいて想像しやすく、理解しやすいです。

私の中で印象に残った部分・覚えておきたいと感じた部分

私の中で印象に残った部分や覚えておきたいと感じた点は、

  1. 飲食店の原価率や利益率などのリアルな数値
  2. 売上伸長や毎年の利益成長が当然の目標とされる社会において、売上にあえて上限を設ける姿勢とその効用
  3. 100食売り切ったら従業員がすぐ帰れるようにしたことで起きた失敗とその対処
  4. 一般には就活や転職に弱いとされる属性の人を採用する意図とその効用

です。

特に3点目に挙げた「業務が早く終われば早く帰宅できるという体制が生んでしまう失敗」ですね。私の牧場においても同様のケースで苦しんだことがあり、かなり興味深く読みました。

飲食店経営の実態が子細に語られているので、自分から見た異業種の様子が垣間見れるというのもおもしろかったです。

感想・レビュー

そもそも本書を読んだきっかけですが、『お金の大学』という本で有名な「リベ大」のサイトにて推薦図書として挙がっているのを見つけたことです。

私自身は、日頃「長時間労働とそれによる一定の利益確保」が組織の論理・命題となっている牧場にて働いています。余剰資金を株式投資に回せる程度の経済的恩恵は受けています。しかし、一方で膨大な時間という人生の資源を失ってもいます。

そうした生活に以前から疑問を抱いています。そこを変えられるほどの力量や行動力は今のところ持ち合わせられていませんが。

だからこそ本書のタイトルには興味をそそられました。実際読んでみて良かったですね。

こういう経営もある・成り立っているということを知ることができたというのは一つの収穫でした。

収益の確保はそこそこに、生活をより重視する経営スタイルというのは私自身強く共感するところです。しかし果たしてそんなことは実現可能なのだろうかと以前はぼんやり考えていました。真剣に考えていたわけではなく、頭の隅の方でそういう思考が回るという感じです。今回、そうした経営の実例・具体的な施策があるんだということを知られました。ただ夢想するだけと、実例を知ったということでは大きな差があります。実現可能性を以前よりは身近に感じられるようになるんですね。

一方で私と著者の間にある大きな壁としてリーダーシップの強さを感じましたね。組織の仕組みを作り、それをうまく運用するにはやはり要所要所でリーダーが押さえるべきポイントがあると思います。そのポイントを著者はしっかり押さえることができ、私はなかなかできないという違いです。

また、従業員採用の目線はかなり新鮮でしたね。一般に欲しがられるであろうやる気に満ちた人はあえて採用せず、就活・転職弱者と括られるような人を採用するという目線です。常識に盲従するのではなく、目の前の組織・従業員・仕事と相性が良いのはどういう人物かということを真剣に考える。本来はこの姿勢こそが当たり前であるべきなのかなと、ややはっとさせられました。

冒頭にも書きましたが、数字や時間に追われる日常に疑問を抱いている人には一読の価値があると思います。

余談ですが、酪農でこうした働き方を実現するのなら、生乳の販売単価はある程度安定しているという前提のもと、

  • 搾乳牛の頭数をある程度絞る
  • 搾乳頭数に対してかなり余裕のある人員体制をとり休日を多めに回す
  • 休日数の多さをインセンティブとし、賃金水準は抑える
  • マニュアルを整備して、作業水準を一定レベル以上に保つ
  • 原価の大部分を占める飼料費を低位で安定させるため自給飼料の生産に取り組む

といったあたりになるのでしょうか。最後の自給飼料生産は現状やっていない牧場にとってはかなり高いハードルになるでしょう。就農当時の私はまさしくこういう牧場の形を強く志向していました。

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