道尾秀介さんの『龍神の雨』を読了したのでその感想などを書いていきます。
元来、私はミステリー小説が好きです。
ただ、島田荘司さんのような本格ミステリーはあまり読みません。
道尾秀介さんのような、主題が他にあって、その表現手段の一つとしてミステリーを利用している。そういう本が好きです。
『龍神の雨』はだいぶ前に購入して読めていなかった本ですが、仕事がやや落ち着いたタイミングで読むことができました。
なぜ『龍神の雨』を読んだか
そもそも、どうして『龍神の雨』を購入して、読んだかということについてです。
- 道尾秀介さんの『向日葵の咲かない夏』を過去に読み、衝撃を受けた
- 道尾秀介さんの本は、胸の奥の方を抉るような描写がしばしばあり、その感覚が嫌いでない
- 『龍神の雨』というタイトルと表紙のデザインから、しっとりとした感じの内容を想像し、読む時の自分の気分と合っていた
といったあたりでしょうか。
久しぶりに本を読むタイミングでもあったため、道尾秀介さんの読みやすい文体なら負担なく読めそうだということもあったかもしれません。
感想
まずは読んで良かったです。良い本でした。
4人(青年・少年2人・少女)がメインの登場人物の本書は、序盤~中盤にかけて伏線が張られていき、終盤にかけて一気に回収されていくような本です。
終始、明るい感じというよりは胸の奥がチクチクするような感じで物語は進んでいきます。
ただ、最後は決して甘くはないが救いもある。そんな本です。読後に、何かじんわりと考えさせられるような本だと思います。
道尾秀介さんの本は子供が主人公として登場することが多いですが、本書もそうです。そしてそうした子供たちの無邪気な悪意や出来心、想像の産物が物語を悲しく進ませていくことが多い気がします。
我々の日常では、大人は子供のことを必要以上に子供っぽく見ようとしているように感じます。自分が子供の頃をよく覚えている人は、小学生や中学生でもそれなりに周囲を洞察していること、社会や人間関係を見ていることを覚えているのではないでしょうか。道尾秀介さんの描く子供たちというのは、純粋無垢なTHE・子供というよりはそうした子供たちです。
また、作中に”想像は人を喰らう”という言葉があります。私はこの言葉こそ本書の主題なんじゃないかと感じました。巻末の解説を読むと必ずしもそうではないようで、それ以外にも多くの含意がある大変奥深い本ではありますが。
かなり久しぶりに小説を読みましたが、やはり良いですね。道尾秀介さんの本はこれまでに何冊か読んでいますが、楽しいだけ・綺麗事だけという本ではなく、じんわりと胸が打たれるような本が多いのでとても好きです。
道尾秀介さんの著作をサブスクで楽しむ
私自身は、以前は紙の本が読書の中心でしたが、最近ではオーディオブックや電子書籍で本を読むことが増えました。
オーディオブック
の2つを交互に利用しています。
こと小説に関しては、自分で紙の本を読むよりも、オーディオブックでプロの朗読を聴いた方が遥かに良い読書体験になることを痛感しています。小説の世界への没入感が全く違うのです。
電子書籍
を利用しています。
読み放題の対象なら無料で読めるのと、書店や図書館に出かける必要がないというのが良いですね。
*2023年3月20日時点では、Amazon Audibleで道尾秀介さんの『カラスの親指』、『カエルの小指』、『鬼の跫音』という3作品が聴き放題の対象となっています。無料体験を利用すれば、0円で3冊ともまるまる読書できるので、気になる人は利用してみてください。
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