今回は2024年に読んだ本の中で良かったもの10冊を紹介します。今年はちゃんと数えてはいませんが、少なくとも100冊以上の本を読みました。ジャンルは古典、教養本、ビジネス本、小説など幅広いです。その中から特に良かったものを10冊選んでみます。
なお今年読んで”一番良かった”小説&教養本は既に別記事として紹介済みです。
2024年の個人的ナンバーワン小説(『ツリーハウス』角田光代)
2024年の個人的ナンバーワン教養本(『人生論ノート』三木清)
①『アドラー心理学』八巻秀
アドラー心理学の概説本です。
本屋と併設されているタリーズで、本屋の本を購入せずともその場で読めるタイプの店舗が近くにあり、そこで偶然読みました。何気なく手に取っただけだったのですが、読んでみるとわかりやすくまとめられていて、とても良かったです。
本書で初めてアドラー心理学の概要を知りました。内容は自分の人間観と非常に親和性が高いです。「今自分が学ぶべきはアドラー心理学かもしれない!」そう思わせてくれました。
一時、神道や神社にハマってやたらに本を読んでいた時期があるのですが、その時以来の「学びたいテーマ」が見つかった気がしてとても嬉しかったです(神道や神社は今も好きです)。本書はそのきっかけを与えてくれました。最近は、日本にアドラー心理学を普及させるきっかけとなった『嫌われる勇気』(岸見一郎)を読んでいます。
②『自分とか、ないから。』しんめいP
東大卒ニートという著者による哲学エッセイ。仏教や老荘思想といった東洋哲学を、ものすごくわかりやすく紹介してくれています。書店でも大人気のようですね。
私は人に勧められてAudibleで読破しました。他薦がなければ自分からは読むことはなかったでしょう。しかし読んで良かった。
何が良かったかというと、独学では躓きがちだった東洋哲学の概要を一通り知れたことです。非常に攻めた書きぶりで、それ故に抜群にわかりやすかったです。
自分のように神経質でややもすると生きづらさを感じる人にとって、東洋哲学は救いになるかもしれない。そう思わせてくれる本でした。読後、本書のタイトルの意味が沁みるようになっています。
③『王陽明 その人と思想』安岡正篤
儒教の一派である陽明学。その祖である王陽明について書かれた本です。図書館で借りて読みました。
本書を読んだきっかけはSBIホールディングスの北尾会長です。SBIホールディングスの株主総会に参加してみたところ、北尾会長が名経営者と評されるとおり大変魅力的な人物に映りました。人間味が溢れています。その北尾会長が総会中に言及していたのが本書の著者である安岡正篤です。帰宅して調べてみると、北尾会長は安岡正篤に私淑しているとのこと。ならば一度読んでみよう、となりました。
本書で良かったのは、王陽明についての解説もさることながら、安岡正篤の持論(?)部分です。最も印象に残ったところを引用します。
親子・兄弟・親族・隣人・朋友・世間と親しく平和に生きることよりも、道徳や信仰を研究して、それらのことに関する知識や理論を組み立てるほうが、実は比較にならんほど簡単で容易なことなのである。それを世間の人はまったく逆に考えている。
道徳や信仰を研究して、それらに関する知識や理論を組み立てることの方が、親子・兄弟・親族・隣人・朋友・世間と親しく平和に生きることよりもずっと簡単で容易なことだということが本当にわかったとき、人間は初めて道徳や信仰を研究する資格ができるというものであります
私自身、後継ぎを目指して牧場で働き、そこで周囲の人と激しく衝突して挫折した経験があります。それもあってか上記の引用部分に妙に納得してしまいました。
本書がきっかけで安岡正篤の著作に対する興味は強くなっています。今はAudibleで『禅と陽明学』(安岡正篤)を少しずつ読み進めてます。
④『まず、ちゃんと聴く。』櫻井将
エール株式会社の代表者による著作です。エールについては歴史系Podcast番組のCOTEN RADIOで知りました。「いかに人の話をちゃんと聴くか」について具体的な方法論や考え方が書かれています。内容はとても良いです。Audibleで読みました。
私が”聴く”という行為に重点を置くきっかけとなったのは『こころの対話25のルール』という本。
そこから派生するかたちで本書を読みましたが、「聴く」ということについてはこの2冊を繰り返し読むことが良さそうだと感じています。
簡単そうで実は全く簡単でない「聴く」について、今ではとても希望を持てる行為だと認識してます。自分の人生にも、自分と関わる人にとっても良い変化を与えてくれる。そんな予感とも実感ともいえるものが確かにあります。実際この2冊を読んでから、家族や古くからの友人と話をするととても会話がしやすかったです。表面的な会話ではなく、ちゃんと「精神的な充足感を伴った対話」ができている感じがします。
今は実際にエールのサポーターになろうとプログラムを受けています。そうしたのは、本書の納得度の強さによるところが大きいです。
⑤『お金のむこうに人がいる』田内学
著者である田内学さんの講演を聴く機会に恵まれたため、本書を購入。お金に対する見方・考え方を是正してもらえた感じがします。
私は投資が好きです。ややもすると「お金万能主義」に陥ってしまいそうになります。そんな時に本書を読めたことで、大事な部分を見落とさずに済みました。
本書を読んで明確に変わったのは、実生活でお金を払うシーンです。髪を切ってくれた人、レジの人、荷物を届けてくれた人、宿で配膳してくれる人。こうした人の目を見て、ちゃんと感謝を伝えられるようになりました。大きいのは、表面的にそう言ってるのではなく、本心からそう思って言えていることです。
今のFIRE生活では資産をいかに積みあげるかということより、「いかに善く生きるか」ということに強い関心があります。その点で本書から得られたものはとても大きいです。
⑥『草枕』夏目漱石
大学時代に読んだ本書を、久しぶりに再読しました。
冒頭の次の一文を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。
智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。
夏目漱石の人間観に強く共感でき、読んでいて心地よかったです。大学生の時は本書の内容をあまり理解できていませんでした。しかし今では当時よりも多くのことが分かるようになっており、自身の変化を実感。サラリーマンや牧場での経験、大人になってからの家族関係などそうしたことの影響なのだと思います。
主人公と宿の女性とのかけあいがよんでいてとても面白いです。
好きな本なので、また折を見て読み返すことになりそうです。
⑦『DIE WITH ZERO』ビル・パーキンス
「流行りものはあまり読みたくない」という天邪鬼的な考えから、これまで読まずにいました。とはいえ投資家で絶賛する人も多いため、気になって図書館で借りてみました。
結果、すごく良かったです。
私のように「質素倹約型のFIRE」を志向する人には特に相性が良さそうです。本書のメッセージで最も自分に刺さったのが「人生の目的は思い出作りだ」というもの。人生観を大きく揺さぶられた感じがして、自身の課題だった行動力が大きく改善しました。
本書を読んだその日のうちに、ぼんやり頭にあっただけの旅行をすぐに予約して行ってきました。それまで「費用もかかるしな…宿もハズレだったら損だし…自分のFIRE生活では収入も限られるし」とうじうじしていたのですが、「宿がハズレてもそれも思い出になるから良いか。お金がもっと必要ならその分だけ副業するなりスキマバイトするなりしたらいい」と考えがガラッと変わりました。
「将来のために」が行き過ぎて今を犠牲にしがち。そんな昨今だから本書が支持されているのでしょう。FIRE生活を充実させるためにも、繰り返し読みたいと思い紙の本を購入しました。
⑧『生命科学的思考』高橋祥子
生命科学研究者でもあり起業家でもある著者の思考法について書かれた本です。本書を読んだきっかけは、独立研究者である山口周さんと著者の対談が収録されている『思考のコンパス』という本。
ここで著者の話す内容にピンときて、まずは図書館で借りました。そこで確信を得て、紙の本を購入。
変な表現かもしれませんが、本書で示されている思考法はとてもクールです。人間味を欠かさず、かといって情緒に頼らない、落ち着いた思考方法です。私の持つ人生観や世界観と相性が良く、とても多くの示唆を得られました。
引用を含め、自分がとったメモの一部を抜粋します。
・何かに不安を感じた時、それが遺伝子の機能によるものであると冷静に捉えた上で、actionableな不安(不安な対象に対して行動可能なもの)とactionableでない不安に分けて考え、後者については「不安なものには蓋をする」ことを決める。不安なら事前に打つ手を考え、準備できることはすべて行動する、それでも残った不安については考えない
・子どもが何かとわがままですぐ泣くのは、自分一人では生き延びることができず、周囲に頼るしかないため。……。わがままなのは、わがままでいる必要があるということ
・多様性にあふれた生命では、ある条件では生存に有利になるものの、別の条件では生存に不利になるものもある。だが、それでよい。多様性に「最強」という概念も「最弱」という概念もない。たまたま今の環境下で強かったり弱かったりするだけ
・自分が周りの人と違うと、不安に思う人がいるかもしれない。特に日本では、同調圧力のせいかその傾向が強いといわれることもある。しかし生命科学の立場からゲノムデータを見れば、他人と違うことは生命の歴史からして当たり前で、命をかけて多様性を作り出してきた生命の最大の特徴であり、資産でもあると理解できる
他にもメモを取った部分が膨大にあります。
2024年に読んだ教養本No.1として三木清の『人生論ノート』を紹介しましたが、次点で本書でした。それぐらい自分にとって影響力のある本です。
「いかに生きるか?」をより自問するようになったFIRE生活において、本書が参考になる部分は多々あります。引き続き2025年も本書を再読します。
⑨『夜と霧』ヴィクトール・E・フランクル
教養本の古典的名著です。
大学生の時に買って読んだものを再読しました。⑥の『草枕』と同様、学生時代にはわからなかったことが、今ではよく分かるようになっていました。
メンタルが抉られるようなことが書かれていた記憶があり、かなり構えて読みました。しかしもちろん悲惨な内容はありますが、全然読めないというわけではなかったです。
今回私が本書から受け取ったメッセージは次の2点。
- 人間を究極の状況下で支えたものが愛。現在では正面から語ることに恥ずかしさを感じてしまうようなこの「愛」というテーマこそ、恥ずかしいなどと言っておらずに人生で真剣に向き合うべきなのかもしれない
- 過酷な状況下でも最後まで「良心」を失わずに生きた人々も少数ながらいた。この事実がややもすると厭世的になりがちな自分にとっての希望となりうる
こちらも2025年の再読本となります。
⑩『坂の途中の家』角田光代
私の好きな小説家である角田光代さんの作品です。
主人公は裁判員裁判の裁判官となった女性。主人公の内面の描き方がとてもリアルです。ずっと作中の世界に入り込んだまま読み終えました。紙の本ではなく、Audibleで読んだのですがそれも良かったのかもしれません。
育児でキャリアが中断することに対する焦燥感、夫婦間のすれ違い、優しいはずなのになぜか引っかかってしまう夫の言動、裁判官・社会人として自分は「うまくやれているのか」という不安。こうしたものが生々しく描かれています。
現代の社会人、核家族、子育て世帯、主婦(主夫)。こういった属性の人々が抱える生きづらさのようなものがとてもよく表現されていると思います。
「友人に話したことはないけど、本当は普段自分もこんなことを感じていた。」と思う場面がいくつもありました。
決して読んでいて明るい気分になる話ではないのですが、自分が抱えていたモヤモヤがうまく言葉で表現されている感じがしてスッキリします。50代以上の人が読んだら、現代の働き盛りの世代や若者がどういう心理的環境下で生きているのかがよく分かるのではないかと思います。
私は親や祖父母にこうした小説を読んでもらえていたらな…と何度も思ってしまいました。本書を読んでからもう何か月も経ちますが、今でも物語のいくつかのシーンをありありと想像することができます。こうして読後に折に触れて思い出す作品というのは、自分にとって価値ある作品なのだと思います。
おわりに
今回は2024年に100冊以上読んだ本の中から「良かったもの10冊」を紹介しました。
どれも読後に何かしらの影響を私に与え続けている本です。読んだはいいものの、全く印象に残っていない。そんな本もたくさんありますから、こうして読後何ヶ月経っても思い出せる本というのはやはり自分にとってどこか特別なのだと思います。
振り返ると2024年は多読の年でした。色んな本を図書館で借りたり、Audibleで聴いたり。広く浅くという読書体験だったといえます。2025年については狭く深くという読み方をする予定です。具体的には次の10冊+αを繰り返しメモを取りながら読む予定です。
- 三木清『人生論ノート』
- 高橋祥子『生命科学的思考』
- 田内学『お金のむこうに人がいる』
- エーリッヒ・フロム『自由からの逃走』
- V・E・フランクル『夜と霧』
- D・カーネギー『道は開ける』
- スティーブン・R・コヴィー『7つの習慣』
- ドラッカー『マネジメント』
- 伊藤守『こころの対話 25のルール』
- ビル・パーキンス『DIE WITH ZERO』
これらの本を核としつつ、興味のあるアドラー心理学についてサブで学び、Audibleで雑多な本を聴き流す。このような心づもりでいます。
FIREをしてからよく本を読んでいますが、とても良いです。『DIE WITH ZERO』のように課題だった自分の行動力を変えてくれる本もあれば、『お金のむこうに人がいる』のように人との向き合い方を如実に変えてくれた本もあります。小説は情緒的な渇望感を満たしてくれます。2025年もこのように読書から多くのものを得られると思うと、とても楽しみです。
私が読書で多用しているAudibleで本を読んでみたいという人はこちら。無料体験期間でも通常のプランと同様に本の聴き放題ができます。合わなければ無料体験中のいつでも解約できます。本を読みたい人にはおすすめです。
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