【audiobook.jp】『震える牛(相場英雄)』を読んだ(聴いた)感想・レビュー【牛が絡んだ警察小説】

雑記

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オーディオブック配信サービス – audiobook.jpを利用して、相場英雄著『震える牛』を読みました。

2012年に刊行された社会派サスペンスで、ドラマ化もされた作品です。

酪農業に携わっている身としてなかなか面白い作品でしたので感想を書いていきます。

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なぜ『震える牛』を読もうと思ったか

そもそもなぜ『震える牛』を読もうと思ったか。

深い理由はありませんでした。まず作品名も、著者も知らなかったからです。

audiobook.jpのアプリで、何か酪農作業中に聴くための良い小説はないかと探していた折偶然見つけた作品でした。

私は『慟哭』(貫井徳郎)や『殺戮にいたる病』(我孫子武丸)といったシリアスな小説がなかなか好きなのですが、本作もタイトルや表紙のイラストからそのような印象を嗅ぎとりました。

面白かったところ

  • 肉用牛が重要な要素の一つとして登場する珍しさ
  • 成型肉などディープな話が出てくる
  • ショッピングモールやスーパーなど小売産業の経営の難しさが垣間見える
  • 主人公が嘆息する地方の道路沿いの風景
  • 政治や警察など権力を巡るゲームがご都合主義で終わらせない
  • 途中でタイトルの意味が分かった時のマニアックな喜び

肉用牛が重要な要素の一つとして登場する珍しさ

肉用牛、養牛農家、獣医師などが登場するのですが、そもそもそのような小説自体が珍しいので、日頃牛と接する仕事をしている身としてかなり新鮮でした。

過去に養牛農家を大いに苦しめた疫病なども登場します。

成型肉などディープな話が出てくる

食肉産業の闇の部分として、成型肉などディープな話も出てきます。

成型肉はご存知でしょうか。スーパーなどでもしばしば見かけるもので、それと知らずに買って食べたことのある人も多いと思います。

私自身、大学生の時や社会人になりたての頃に、安価なお肉として喜んで買っていた記憶があります。

ところが、本作の中で説明される成型肉やそれに近しい加工肉の製造方法を読むと、背筋が冷たくなるような感じがします。

小説の中で登場する話なので、現実世界とどこまで対応しているかはわかりません。ですが、私が今後スーパーや外食のお店でそれらしい文字を見かけた時は、まずこの種のお肉は口にしないでしょう。

ショッピングモールやスーパーなど小売産業の経営の難しさが垣間見える

薄利多売など、儲かるというイメージとは決して近くない小売産業ですが、そのかじ取りの難しさが本作の中でも強調されています。

小売業同士での苛烈な競争の中で揉まれる時、時にはその皺寄せが消費者に行っているのかもしれない。そのようなことを考えました。

と同時に、小説の中でも述べられていますが、消費者自身がその流れに拍車をかけている面もあるのだと。難しい実態だと思います。

主人公が嘆息する地方の道路沿いの風景

主人公が各地方に出向いた際、道路沿いに並ぶ全国チェーンのお店の数々を目の当たりにし、どの地方に行ってもその景色が変わらないということを嘆くシーンがあります。

非常に同感です。

私は旅行が好きで、大学生の時に日本の様々な都道府県を回りましたが、地方に行ってもどこでも見るチェーン店が幹線道路沿いにひしめいていることが多かったです。

それと同じ感性を抱く主人公に感情移入できるというところは面白かったですね。

政治や警察など権力を巡るゲームがご都合主義で終わらせない

勧善懲悪でスッキリして終わり。

そのようなご都合主義的な終わり方をしなかったのも私好みで好印象でした。

途中でタイトルの意味が分かった時のマニアックな喜び

予備知識を持たずに読んだ本だったので、当然タイトルの意味も分からずに読みました。

しかしながら、牛についてのある程度の知識は持っているので、話の流れから途中でタイトルの意味に気づくことができました。

牛関係の仕事をしている人でなければなかなかそのようなことにはならないかと思いますが、途中でタイトルの意味に気づくことができるとかなりうれしいものです。

悪い意味で気になったところ

  • 刑事モノというだけで昼ドラのようなイメージが湧いてしまう
  • 昔気質の警察官という主人公像が良くも悪くも典型的

刑事モノというだけで昼ドラのようなイメージが湧いてしまう

いわゆる刑事モノ(警察モノ?)という体をとっているので、昼ドラっぽい連想をしてしまうということはあります。

実際、読後に知ったことですがドラマ化もされた作品のようです。

昔気質の警察官という主人公像が良くも悪くも典型的

主人公の「世渡りに不器用で曲がったことは許せない」という昔気質の警察官という感じも、良くも悪くも典型的という感は否めません。

『震える牛』をおすすめできる人

  • 刑事モノが好きな人
  • 牛と関わる仕事をしている人
  • 社会派の小説が好きな人
  • 実直で熱量のある主人公が好きな人

にはおすすめできる作品です。

私自身は、読んで良かった・面白かったと思える作品で満足しています。

特に、最後に挙げた「実直で熱量のある主人公」という点ですが、最近のフィクションではなにかと冷めた感じの主人公が登場することが多い気がするので、せっかく小説を読むなら真っすぐな主人公が良いという人にはピッタリだと思います。

私もフィクションの作品を楽しむなら、そのような主人公の方が好きですね。

オーディオブックで本作を聴く方法

本作は、私のようにオーディオブックで聴こうと思った場合、オーディオブック配信サービス – audiobook.jpでは聴くことができますが、AmazonのAudibleでは取扱いがありませんでした。

audiobook.jpでは14日間~の無料体験が用意されているので、気になる人は是非試してみてください。

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