私たちが口にする牛肉にも実はさまざまな種類があります。あなたはどれだけ知っているでしょうか。そして普段それらを意識することはあるでしょうか。
和牛といえば多くの人がまず思い浮かべるのは黒毛和種(いわゆる黒毛和牛)ではないでしょうか。実は、和牛には黒毛和種以外にも褐毛和種、無角和種、日本短角種があり全部で4種類あります。
また、スーパーや手ごろな焼き肉店でよく目にする「国産牛」表記の牛肉は、多くがホルスタイン種の牛肉であったりします。さらに、ホルスタイン種と黒毛和種の掛け合わせで生まれる「交雑種」もいます。和牛や交雑牛ももちろん国産ですが、その場合は「和牛」「交雑種」などと明記され、ある種アピールされていることが多いです。
それらとは別に外国産の牛肉もたくさんあります。
なかなか種類が多いですね。私も酪農業界に入るまで、牛肉にここまで種類があることは知りませんでした。
細かい種類を挙げはじめれば本当に様々な牛の種類・牛肉があるわけですが、今回は日本で特に食べられる上記のうち数種類について、日頃酪農家として牛の世話をしている私がどういう感想やイメージを持っているかご紹介します。酪農は乳用牛(主にホルスタイン種)を扱う業種なので、必ずしも肉用牛を飼育するわけではないのですが、同じ牛を育てる者として雑感を述べていきます。
黒毛和種
日本で「和牛」として流通している牛肉の多くがこの黒毛和種です。私が見聞きする情報では、日本で「和牛」として育てられている牛の9割以上が黒毛和種です。神戸牛や松阪牛など多くの銘柄牛があります。いわゆる「A5ランクの霜降り肉」としてイメージされるものはほぼほぼこの品種のお肉です。

そんな和牛肉の代表格ともいえる黒毛和種のお肉ですが、私は「A4ランク」あたりが一番好きです。お肉の味と脂のバランスが一番よく最もおいしいと思います。
何かと話題に上がるA5ランクのお肉は正直脂がきつく、30代の私でもすぐに胃もたれになります。なんというか「やりすぎ」感があります。ステーキならば本当に1~2切れで十分です。
褐毛あかげ和種
日本の中でも産地が限られ、主に熊本と高知で飼育されています。熊本あかうし、土佐あかうしとして有名です。黒毛和種と比べて「赤身のお肉」と表現されることが多いですね。

とてもおいしいです。食べられる機会というのはほとんどありませんが、私はふるさと納税の返礼品として手に入れ自宅で食べました。
サシなどは黒毛和種よりも少ないのですが、赤身肉ならではのおいしさがあり、「お肉そのもののおいしい味が感じられる」と驚いた具合です。
食べたことがないという方には是非一度食べていただきたいですね。
無角和種
主に山口県で飼育されている品種で、こちらも数はかなり少ないようです。 肉質は黒毛和種と比べるとやや物足りないとされています。

残念ながら私は一度も食べたことがないです。ふるさと納税などで手軽に入手できると良いのですが。
日本短角種
主に東北(多数)と北海道(少数)で飼育されている品種で、無角和種と同様に頭数はかなり少ないようですね。肉質は黒毛和種と比べるとやや物足りないとされています。

ふるさと納税で北海道産の日本短角種のお肉を手に入れ食べたことがあります。正直な感想を言ってしまうと、私の口には合わなかったです。お肉が硬く赤身の味もあまり感じられませんでした。一度しか食べたことがないので、また別のお肉(例えば東北産)を食べる機会に恵まれれば違う感想を持てるかもしれない…と期待したいです。
交雑種(=黒毛和種×ホルスタイン種)
交雑種といっても、黒毛和種×ホルスタイン種、黒毛和種×無角和種、といった具合に色々とあるわけですが、赤毛和種・無角和種・日本短角種の産地が限られていることから、交雑種として多く流通しているのは黒毛和種×ホルスタイン種のお肉です。
酪農家においても、自分の牧場の乳牛(ホルスタイン種)に黒毛和種を掛け合わせると交雑種の子牛が生まれてくるので、かなり身近な品種です。

スーパーや焼肉屋さんでもよく扱っており、和牛肉と比べるとリーズナブルです。しかし、その味はあなどることができません。
サシは黒毛和種よりも少ないですが、しっかり入っており、赤身のおいしさとサシ=脂のおいしさのいいとこどりができている印象です。「お肉を食べている」ということが強く感じられ、私は非常に好きです。

私の思う牛肉ランキング
- 1位:A4ランクの黒毛和種
- 2位:褐毛和種
- 3位:交雑種
- 4位:A5ランクの黒毛和種
- 5位:ホルスタイン種、日本短角種
- ランク外:外国産(主にスーパーなどで売られているもの)
私の思う牛肉ランキングは以上のようになります。無角和種だけ食べたことがないので残念ながら対象外となっています。
ここ最近、「国産牛と競合する外国産牛肉の味も改めて確かめておかねば」と外国産牛肉のカルビをスーパーで買って食べたことがあるのですが、歴然とした肉質の差があり「まだまだ国産牛は大丈夫だ」と安心した次第です。ただ、国産牛と外国産牛肉にはやはりそれなりの価格差があるので、消費者の方々の気持ちが離れてしまわないように、相応の価値が提供できることが国産牛には求められるのだと思います。
余談
最後に余談として業界動向のご紹介です。とにかくサシの入り具合=A5ランクをとることに偏ってきた黒毛和種業界ですが、近年は脂の味わいに焦点が当てられるように変化してきています。
これまでの黒毛和種の遺伝的な改良(肉質の良い血統を残してくこと)はサシの入り具合などが重視され、「おいしいかどうか」は対象外だったんですね。それが、ここにきて見直され始めていて、オレイン酸に代表されるような脂の質そのものが注目されるようになってきました。私個人としてはとてもいい流れだと思います。
今後の国産牛(和牛や交雑種など)は今よりもさらに「味そのものがちゃんとおいしくなっていく」そんなことを期待して良いと思います。楽しみですね。
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